社長メンタル

家庭の問題、ブラックすぎる会社での勤務。「どうせ俺なんて」と思っていたが、いつからでも成長はできる。

2022/02/01 社長メンタル

株式会社四谷進学会 田中 淳吾 社長

【事業内容】

プロ家庭教師派遣事業

ブラックすぎる会社で9年間。仕事は辛かったが会社経営のきっかけに

──田中社長の失敗談を教えてください!

僕は約9年間、ブラック企業で勤めていたんです。会社の立ち上げから加わってやっていたんですけど、それがもう辛くてですね。とにかくずっと罵倒されるみたいな感じでした……

──どんなことを罵倒されるんですか?

社長から「お前なんでこんなことやってるんだよ。」だとか、お昼ご飯を食べに行こうと思ったら「今飯食ってる場合じゃないだろ。」という感じでした。朝9時から夜中の1時ぐらいまで毎日働いていましたね。

──その時は何のお仕事を?

塾向けのソフトウェアの営業や、教育系の派遣の仕事をしていました。その時は年間の休みも15日~20日ぐらいでしたね。

──年間で、ですか!?1ヶ月に1日2日あるかないか。

その時は電車が入ってきた時にふらっと吸い込まれそうになるみたいな感覚も結構ありましたよね。本当疲れすぎているから、それすらも考えられないみたいな感じで。精神的牢獄にいたみたいな感じでした。

とはいえ、9年間ずっとそうだったわけではなくて、その期間は2、3年ぐらいであとは週1ぐらいは休みをもらえていたりしたんですけど。

──少ないですね、それでも(笑)

普通に考えたらそうなんですよね(笑)

その会社はゲームアプリの制作もしていて、ゲームのテストをする期間は勤務時間が長くて9時から夜中の4時とかまで。

──もう朝ですねそれ(笑)

そうです(笑)

10分で家に帰ってすぐ寝て、起きての繰り返しみたいな。あれは辛かったですね。でもそれだけ実務の力や、メンタル的強さと仕事の速さ、へこたれない力みたいなのがついたようには思いますね。

就職したくない!渡米したが逃げていることに気づいた

──会社の立ち上げから参加されたってことは、もともと起業したいと考えていたんですか?

起業に興味があったわけではないんですが、とにかく僕は就職をしたくなかったっていうのがありまして……

大学生活中に親が亡くなったりとかして、ずっとバイト生活だったんですけど、大学卒業してから普通に就職していくことに、あまりいい感情をもっていなかったんですよね。

それで22歳くらいの時に一人旅でアメリカに行ってみようと思ったんです。色んな人と関わったり知らない土地に行ったりすることがすごく楽しかったので、大学卒業したらアメリカにでも行って、なんかやってみようかなと思っていました。

アメリカで飲食店をやっている知り合いの社長さんに「働かせてくれないか。」と話をした時に、「多分お前は日本に残った方がいいよ。」と言われたんです。

結局は「逃げだ」というのが見透かされていたんですね。そんな中途半端な気持ちだったら何も身にならないよということを伝えたかったんだろうなと後で気づきました。

それでもう1回考え直そうと思っていた矢先に、バイト先の上司に「一緒に会社をやらないか。」と誘われたんです。

──その店長が罵倒する人だったんですか?

そうです。バイトで働いているときは罵倒されることはなかったですけど、評判は悪かったですね。人徳みたいなのはなかったですよね。

──それでもなぜ一緒にやろうと思われたんですか?

他にやることもなかったし、いきなり会社を立ち上げるとか23歳で役員になれるってちょっとかっこいいじゃないですか。

あまりに若くて未熟だったんで、ハマってしまったっていう感じですね。

とはいえ、その経緯がないと今の会社経営にも繋がってもきていないと思うので、結果的にはよかったと思っていますね。メンタルも強くなったし。

勤めていた会社がなくなり、自分で起業することに

──過酷な労働環境にいた中で、なぜ起業しようと思われたんですか?

実はそれもその社長からの誘いでして……

9年間働いた会社がなくなってしまったんですよ。別部門で、2億円ぐらい借金ができちゃって。それで当時付き合っていた親会社に借金をなんとかしてくれと泣きついたら会長の逆鱗に触れてしまって、黒字だった教育事業も全部その会社に吸収されたんです。

その時に僕も教育業界の中では何でも知っている状態にはなっていたので、多分、成功はできるだろうなという実感はありました。それを見ていた前の会社の社長が「一緒にやらないか?」と言ったんですけど、それにもやっぱり裏があって。

立ち上げる段階では「お前が自分でとりあえずお金出しといてくれ」という感じだったんですけど、途中から「俺が全部お金を出してあげるから」と言ってきて……

──おや?(笑)

はい(笑)

僕も無知な時期が20代の時はありましたけど、自分で会社を法人にするために、登記したりしていく中で自然と株の知識や会社の成り立ちが段々わかってくるじゃないですか。

株を100%持たれるとどれだけ危険なことかって当然わかりますよね。だからこれはちょっとマズいなと思いました。

「ちょっとそれはおかしいんじゃないですか?」と話をしたら、「じゃあ、一旦6:4ぐらいにしよう」みたいな話になったんですよ。僕は6を持ってなんとか収めたって感じなんですけど。

それで月に5万円のコンサル契約も入るみたいな感じになって、その社長にコンサルをしてもらうみたいな。

株も持ってもらってその代わりにコンサルもやるみたいな感じなんですけど、そのコンサルも半年に一回ぐらいで全然中身がないんですよ。

──一緒に経営をしようという感じではなかったんですね。

そうですね。その人は他の事業をやりたかったものですから、教育にはまったく興味ないんですよ。お金だけ欲しかったっていう感じでした。

利用しようというのがありありとわかるような状態でした。

──教育事業をやりたいというのは前からあったんですか?

僕は教育学部でもないし、教育にすごく興味があったわけでもないんですけど、事業をやる中で親子関係なり、教育の現状が見えてきて……

中学受験のお子さんが多いんですけど、受験勉強は親御さんが子どもの幸せのためにという気持ちで中学受験させたいとか、良い教育を受けさせようと思って始まるんです。けれど、いつしか親の為になっていたりとか、子どもに合格というものを与えたいがために押しつけになっちゃっていたりとか。

だけど、教育は親子関係と一体でないと本当に良いものになっていかないというのをなんとなく感じていたんです。

──親子関係ですか?

例えば、プロの先生が子どもに良い指導をしても、親が「もっと勉強しなさいよ。」とりつけたらやる気がなくなるじゃないですか。そこで相殺されるみたいなイメージなんですよね。

家族は一番密接な関係性なので、だからこそ良いことも悪いこともすごく影響されるんです。

何かあったら必ず帰ってくる場所とか、自分のホームが家族であるという関係性が保たれていればその周りの友人関係であったり、仕事や大きくいうと国という部分にまで波及していくと思うんです。

日本は食べるものには困らないけど、幸福度は世界でも最下位に近い。教育が変わるとその状態も変わっていくだろうなという実感はすごく感じました。

「どうせ俺なんて」親子の関係性が自己肯定感に関係している

──田中社長は家族関係で苦労した点はありますか?

あります。僕の家庭は両親の夫婦関係が悪かったんです。

それで中学3年生の時、引きこもりになったことがありました。それは家族関係もそうだし、学校関係もそうだったんですけれども。

父親が不規則な時間帯で働いていたので、生活習慣も乱れるし大変じゃないですか。そういうのもあってかパチンコやお酒にのめり込んじゃったり……

そんな感じでサラ金に手を出して結構借金してたらしいんです。それで夫婦仲が悪くなっちゃったりしたんだと思います。父親が帰ってくるといつもケンカになるので家にいるときはビクビクしていましたし、あまり親から認められていなかったなと思います。

──その経験が今のお仕事の中で繋がっている部分があるんですか?

そうですね。僕は会社を立ち上げるまでは、平均よりもずいぶん下のところにいたと思うんです。ずっとビクビクしたりとか、何をするというような決断をしたりすることもできず、ただフラフラと自分の人生を自らの手で切り開こうとはあまり思ってなかったんですよね。

もちろん個人的な原因もあるんでしょうけど、でもやっぱりそこの親子関係にあると思ったんですよね。

「どうせ俺なんて」という考えが幼少期から積み重なってくると自分に対する肯定がしにくくなるみたいな事はあると思うし。なので、今の親達が小学生とか中学生ぐらいの子ども達に対しての接し方や言葉がけ、関係性というのを変えることができたら、その子ども達が変わるじゃないですか。

そうすると、その子ども達はまたさらに子ども達に対して、いい言葉がけをし始めると思います。

負の連鎖をなんとかしたいというのが我々が思っていることです。

我々の理念には「人々の自己実現を叶える」というのがありまして、根本的な土壌を作ることによって、人々の自己実現を叶える社会を作るっていうことなんですよね。

──自己実現とはどういうことなんでしょうか?

マズローの5段階説で自己実現は最上位にあるんです。

自己実現は苦しいこと、「僕は今十分幸せだから、自己実現を叶えなくていい」と思われることもあるんですけど、みんなが自己実現に向かっていくというのは、人が自然体でいるというのと同じことなんですよね。

自己実現を叶えなくても幸せなんだと言う人もいるけど、それは違うと僕は言いたいです。みんな自分が心から幸せだなと思って生きたいと思うんですよ。なので、それを放棄するなんてことはありえないと。

だけど、本当の意味での幸せ、つまり自己実現から逃げて安全の方に寄っちゃうとかってことなんですよね。

──なるほど。殻に閉じこもっちゃっているみたいな感じですか?

それに近いですかね。それってちゃんと幸せと向き合おうとしてないんだと思うんです。

あるいは、外部的環境の親や学校から受ける影響によって、自己実現に向けてまっすぐ向かうことが阻害されていることがあると思います。自己実現に向かえるような状態を我々の方で整えていくというのが、我々の会社の理念としてあります。

──田中社長の経験から得られた教訓は何でしょうか?

どの時点からでも人は成長できるということですね。

人それぞれによって抜けている所、能力の高い所があると思いますが、人間はそもそも優秀な生き物だし、何かきっかけがあったり自分の軸をしっかりと持とうとしたりさえすれば、どんなに大変な状態からでも成長できるだろうと僕は思っています。

──家庭環境で性格や考え方はだいぶ変わりますよね。もし何か問題があったとしても自分次第では変われるんですね。

インタビューありがとうございました!

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