仕事辞めたい

【経営での失敗談】「絶対的な愛」がない事業はもうしないと学びました。

2021/08/23 仕事辞めたい起業失敗談

アウタートップ株式会社 小林克至 社長の失敗談

【会社名】  アウタートップ株式会社 

【設立】    2011年12月

【事業内容】 スポーツ用品の企画/開発/輸入/販売事業

ゴルフトーナメントの企画/運営事業

イベント什器制作事業

ウェブ広告/制作事業

失敗サラリーマン時代の失敗「仕事辞めます」

一番怒られたのは「会社を辞めます」と上司に進言した時ですかね。大学を卒業後、大手ITベンチャー企業に就職し4年間勤務しました。予算目標も高く、こっそり休日出社するとほぼ全員働いてるみたいな……

今でこそ普通の会社に変貌しましたが、従業員数は1万人ぐらいいて、年次3000人ほど採用し、純増300人程度……(笑)勤続3年程度で古株になってしまうそんな会社でした。

営業成績さえよければ、チャンスも報酬も与えられる。そんな猛烈な時間を過ごす毎日の中、途中つまずいたことがあり、後ろ向きになった自分を厳しく責して頂いたことは、今でも感謝しています。短い時間でしたが、20代では経験できなかった貴重な時間を過ごせたと思っております。

──辞めたくならなかったんですか?

それまでにも数えられないほど辞めたい気持ちはありましたが、1度だけ「これはもう無理だ」と上司に言ったことがありました。

──それは何年目の時ですか?

2年目の時です。入社した時の配属先が、自社商材を代理店に販売する部署だった為、新人研修後すぐに代理店に出向することになりました。運よく担当販社の業績も好調で、過大評価もあったのでしょう。別の新しい代理店立ち上げを担当することになった時、結果が中々出ず、ギブアップしたわけです。常に他社に出向して仕事をしている環境でしたので、本社に出向き事業部長に伝えた際、逆鱗に触れ、「辞めるなら辞めていいけど、一生悔いが残るぞ」と励まされ、熟考の末「もう一回やります」と奮起。2週間後にはまた仕事に戻っておりました。

──そんな怒られるんだ……

ビジネスマシン(複合機やビジネスフォン、PC、ネットワークなど)の販売で、対象は中小零細企業向けの新規営業です。基本的には既に導入されている機器のリプレイスがメイン。ようするに、「間に合っている」状態から接点見つけて提案し、原則即決で契約をとってくる仕事です。今でこそ、商材の特性上、会社の方針は正しいと思いますが、その「売り方」がなかなかしんどいわけです。顧客との関係性や信頼関係などほぼ無視で、毎日が単日真剣勝負。自分の性分として中々馴染めず、わりきって日々を送っていたのは記憶に残っています。

──仕事を飛ぶ人もいそうですね。小林さんは飛んだことありますか?

飛んだことはないね。飛ばれたことはたくさんありますが……

今でこそ、労働環境に対する社会問題がフォーカスされ、労使の関係は改善されていると思いますが、当時は違った気がします。上司部下の関係や労務時間、待遇などなど。特に僕が新卒で働いた会社では、よく言えば熱血精神一辺倒、悪く言えばブラック的な。特に個々が背負う数字のプレッシャーが強い環境下においては、「できる人」「頑張れる人」には良いですが、そうでない人もいる。ITベンチャーが短時間で急成長できた背景には、その前者のエネルギーが組織全体として猛烈に強かったんだろうと思います。

失敗②起業での失敗「気持ちがないとうまくいかない」

──もともと起業したかったんですか?

新卒で入社した会社自体もITベンチャーでしたので、会社が急成長するなかで様々な経験をさせてもらえました。

また、同僚や上司が独立していくことも多々あり、起業することに対する意識は20代から持っていたと思います。

きっかけは、入社して4年が経過したある時、尊敬する会社の先輩2名と共に、ゴルフトーナメントの企画、運営を主たる事業とするビジネスモデルを構築し、揃って退社、新会社を2004年に設立しました。元々スポーツマーケティングに携わる事業に就きたいと考えておりましたし、「やらされ仕事」ではなく自分達で考えたビジネスを、役員として全うできる新鮮さは今でも鮮明に覚えてます。会社に寝泊まりするのは当たり前、1日18時間くらい働いていても、日々がワクワクの連続で、「やりがいのある仕事」というのを始めて知った時でした。

順調に業績は推移するも、新規事業の立ち上げで数億の資金調達を実施し、事業開始後にリーマンショックの影響で業績は急降下。死に物狂いで立て直しを図り、何とか2つの事業が健全化した頃に、自分の方向性との乖離を感じ、2011年に役員を退任、その後2015年まで、国産のゴルフグリップメーカーの立ち上げに参画しました。

同じゴルフマーケットといえど、「メーカー業」は初めての経験でしたが、中小零細企業の工場や職人さん達と協業したモノづくりから、セールスプランニング、PR、マーケティングを一手に任せてもらい、物販事業の面白さを体感することができました。特に学生時代、米国ロサンゼルスに短期で過ごした経験があり、海外販路の立ち上げで得た経験値は今日の会社で生きていると実感しております。

現在の会社は、実は2011年に既に法人として登記をしており、いずれ独立をする前提で存在しておりました。2015年にゴルフグリップメーカーを退社し、現在に至ります。

──起業するのに必要なことって何ですか?

「ビジネスモデルと資金、飛び出す勇気、最後に信頼できる仲間」の4つですかね。当社も創業当初に掲げていた事業構想や規模とは、だいぶ異なってきてはいますが、大きくはぶれていません。僕の場合は、事業承継や確約された案件がある中で始めたわけではなく、スタートアップはほぼ0から。事業開始まで時間がありましたので、綿密な準備が出来たことはよかったと思います。僅かな資金ながら、早期に損益分岐をクリアでき、物販は販路×商材を増やす、イベント事業も着実に実績を積み上げ、コロナ禍で苦しむ企業が多い中でも、積極的に新商材の展開や新規事業に着手できる業況に至っております。

──では改めて、創業当初の話を聞かせてください

創業当初は、計画していた事業が立ち上がるまでワンオペで進める予定でしたが、「どうしてもジョインしたい!」と話す仲間の懇願に負け、彼の持ち込んだ事業を並走する形でスタートしました。スポーツ用品の物販事業、トーナメント企画/運営事業に加え、飲食店向けにソーシャルを活用したWEB集客事業という3事業を2人で始めました。元々、飲食の世界は「料理好き」「お酒好き」ゆえ、人並み以上にリテラシーがあるほうでしたし、飲食業界の仲間もたくさんおりましたので、半ば勢いで始めたわけです。

そもそもスタートアップで激務の中、どこかに「任せておけば何とかなるだろう」という油断があったのでしょう。

ビジネスに対するスピード感や目標意識、商売的感度の違いから早々2年目に彼は体調を崩し、退社してしまいました。その時には他にもスタッフはおりましたが、本業の手を止め、会社全体で対応業務に追われる日々……

相当苦労した苦い経験をしました。そして数年後、同じような流れでまた別の仲間が参画し、その際も持ち込みの事業ありきでジョインしました。過去の過ちを理論的に学べていなかったんですね。どこかで意見、方向性の違いで衝突し、会社のコストで積み上げた事業を、そのまま譲り渡すカタチで元の状態にもどりました。その時ですかね。目先の人任せな短絡的事業や収益を当てにしてはいけないということを学んだ気がします。

──そうは言っても、仕事だからお金って大事じゃないですか。

確かにそれはその通りです。しかし迎合して、「もう一回頑張ろうよ」と思って本心とは別に寄り添っても、結局同じ問題が起きますし、そもそも僕にその事業に対する「絶対的な愛」がないわけです。潤沢な資金と組織があって、それなりに大きな会社に成長していれば別ですが、創業ベンチャーのタイミングでは別です。会社とは生き物ですし、会社は人が成長する場であると経営上は理念として掲げていきたいですが、現実はまだそこではない。ようするに、いまの段階として、興味のない、積みあがらない事業はもうしないって決めたことはとても大きな学びだったと思います。

──小林さんの起業経験から、これから会社を立ち上げたいと思ってる社会人にメッセージをお願いします。

あくまで僕の持論ですが、本当にその事業が「夢中になれるものなのか」「目標や夢、ビジョンを叶えることが可能なのか」を熟考すること。そして、そのスタートアップの為に必要な「ビジネスモデルと資金、飛び出す勇気、最後に信頼できる仲間」というコアを形成できているか、準備できているか。僕の苦い経験を踏まえ、できれば遠回りしない為にも、そんなことを微力ながらお伝えできればいいなぁと思います。

 

失敗設備投資の話

──起業したての時は、設備投資とかに費用は結構かかったんですか?

現在展開する事業の中でも、物販事業については、海外から仕入れを行う商材と、企画/開発から製造、販売を行う商材の2つがあります。後者についてはデザイン、設計、金型加工の際に相当な設備投資が必要となります。最低でもイニシャルコストで数百万円の持ち出しは必須です。これまでに4つの商材(金型)が稼働しておりますが、全てにおいて、当社では助成金を活用し、製品開発を行って参りました。区内の「ものづくり補助金」や中小企業庁が実施する「中小企業持続化補助金」、また経産省が実施する「事業再構築補助金」などが対象です。前職で経験した経営分析や事業計画の作成スキルが役立ち、また製造から販売まで一元化したプロジェクトプランをご評価頂き、運よく今までに申請したものは全て採択を得ることができました。

また「製造」を補助する助成金以外にも、国内外の展示会に出展する際に補助金を申請できる「販路拡大支援」も活用しております。昨今は、コロナ禍、コロナ後の経営改善をサポートする様々な公的支援が多々ありますので、今後も活用していきたいと思います。

サラリーマン時代から会社経営のなかでの失敗を経て、今後の展望を教えてください!

瞬く間に過ぎた10年でしたが、お陰様で2021年10月より当社は第11期を迎えます。現在、物販事業ではサイクリング用品、ゴルフ用品を中心に6つのブランドを保持し、2022年には更に2つのブランドローンチを計画しております。またゴルフトーナメント運営事業につきましてはコロナの影響もあり、現在は1大会のみですが、数社からの引き合いもあり、来期以降更に1~2大会程度増えていく予定です。その他、イベント什器等の製作案件も事業化する予定で準備を進めており、コロナ後を見据え、地道ながら事業の拡大を図っていきたいと考えております。

──インタビューありがとうございました!

アウタートップ株式会社のホームページはこちら

アウタートップ株式会社 http://www.outertop.jp/index.html

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