仕事のやらかし
「起業したいなら早く始めた方が良い」新卒で入った会社が潰れ起業を決心
2021/08/23 仕事のやらかし起業失敗談
株式会社イツザイ 樋口大介 社長の失敗談
【事業内容】HP制作事業/WEB集客コンサルティング事業/メディア運営事業
【設立】2011年1月
失敗①起業後の失敗「さすがに真面目に働こうと思った」
──お客さんからめちゃくちゃ怒られたこととかはなかったんですか?
あるよ!これは社会人1年目で独立したのでっていう言い訳なんだけど(笑)あんまり働くの好きじゃないの、本来。
──それは意外ですね!
ニューハーフの方のホームページを作ってたんだけど、バチ切れされてさ……(笑)帰り道に人知れず泣いたからね(笑)
──なんで怒られたんですか?
お客さんとのHP制作の打ち合わせが入ってたんだけど、その時ちょうど某アイドルグループの総選挙がやってたから打ち合わせに行かずに友達と番組を見てて……
そのお客さんに別の会社もたまたま営業をかけてたんだけど、営業をかけている社長がたまたま知り合いだったからバレたんだよね。
営業かけてる社長とお客さんに呼び出されて行ったら、「えらいやる気のないひどいことしてるらしいじゃないですか!この契約書を破棄させてもらっていいか」と。
営業をかけてる社長もオーナーももう任せられないって言われて。「申し訳ありませんでした」って目の前で契約書を破ることになったね。それで、「ただでさえ起業したてで仕事もないのに、俺なにやってんだろうな。真面目に働こう」と思ったよね。それから「お客さんとの連絡が……」とかそういう低次元なことはさすがになくなったかな。本当に真面目に働き始めたよ。
だからスタート当初にすごい志があってというよりかは、新卒で入社した会社が潰れて「じゃあ、なんかやるか」みたいに始めたから甘えみたいなところはあったと思う。
──新卒で入社した会社が潰れたんですか!そこからどうやって立ち上がったんですか?
ベンチャー行ったら大手で働くよりも若いうちからチャンスが多いかなと思って就職したんだけど、チャンスが訪れるっていうか、むしろ生きていくのにピンチなゾーンに入るっていうね(笑)やべぇ、食えねぇみたいな。あの時はもう絶望しかなかったよ。
現在のイツザイの取締役ともう一人いた創業メンバー、どちらも会社の先輩なんだけど、3人でやろうってなってからはすごく心強かったね。ホームページは売ったこともなかったけど、営業はできるだろって楽観的な部分があったから。
他の2人はコーディングとデザインができるから3人でホームページ作れるじゃん、最強じゃん、やろうって。
立ち直ったのは株式会社イツザイを始めてから早かったかもしれないね。
でも、やっぱりイツザイを初めて最初の1、2年はお金なかったよ。大学の友達にも会いたくなかったから会ってなかったね。
失敗②営業での失敗「数字は取れても解約が多かった」
──営業を取りたいと思っても取れない人もいるわけじゃないですか。でも社長は取れるわけで。それまでに失敗ってありましたか?
営業における失敗ね……それでいうとちょっと自慢話になっちゃうかもしれないけど、18歳の時から営業は得意だなって分かってたのね。大学入学で上京してきて、ふと先輩に誘われてテレアポのバイトをしてたんだけど、20半ばのフリーターの人たちよりも俺の方が数字良くて、5か月くらいでマネージャーにならないかって言われて(笑)
そこで「俺、なんか営業得意なのかもな」ってあったから、社会人1年目の1月から株式会社イツザイをスタートしたんだけど、すーっと入り込めてさ。
だから、仕事を取るのに苦労したことは人生であんまりないんだよね。だからこそ苦労してて……
──どういうことですか?
要はスキル化出来てこなかったから、これを営業の社員に言語化できないはがゆさみたいのがあって。目の前にいる人に話したらええやん!みたいなさ。
ただ、そんな中でも起業して1年目2年目の時は必至だったの、食えないから。だから、お客さんを拘束するくらい何時間も話し続けたね。
──契約がとれるまでですか?
そう。帰れって言われることはなかったんだけど。もうちょっと話聞いてもらっていいですかって2,3時間粘ってたの。「ちょっと考えさせて」って言われたら分かりました、帰りますって(笑)
わざわざ交通費を払って行って、手ぶらで帰れないんですよ。もう顔に出るんだよね、「お金が欲しい」っていうのが。お客さんのどういうニーズがあってとかじゃなくて「とりあえず契約してくれ!」みたいな。
それでもお金ないとそのモードから抜け出すことが出来なくて。
4,5年経ってからようやく「売るのではなく本当にその人に何かしてあげられることはあるのかと相談にのる心持ちだと意外と決まるよ」って先輩経営者に言われてたのがわかったかもしれない。それまでのゴリゴリ売ってた時は、失敗だったね。
──ゴリゴリ営業してた時も数字は取れてたんですか?
一応、取れてはいたけど解約も多かったよね。無理やりとってるからね。一個逸話があってさ……
震災があったとき、神奈川の磯子ってとこに営業で行ってたのね。地震があったけど、そのまま営業続けてたら、さすがにお客さんに「仕切りなおしていいですか」って言われて、「まじっすか、せっかくここまで来たのに」って(笑)
それで駅までトボトボ帰ってたら、磯子って結構海沿いだったから、逃げてくださいって。結局帰れないから、断られたお客さんの一軒家にもう一回戻って「すみません、帰れないんですけど」って泊めてもらうっていう(笑)
──それで契約してもらえたんですか?
契約してもらえなかったよ。とにかく押しの営業だったから、心に余裕がなかったし「頼むから俺に1円でも払ってくれ」みたいな感じだったからさ。今も数字は必要だしうちが伸びていくにはまだまだお客さんは必要なんだけど、それでもずっと長く付き合っていくわけじゃん。
だからそこでねじ曲がった出会い方とか、契約の仕方をしても続かない。だから今は本当にちゃんと続く形で契約しないと、ちゃんとこの人の悩みをうちのコンテンツマーケティングで解決できるのかっていうのをちゃんと真摯に聞くようになったていうのが正しい表現かもしれない。お金から離れられたわけじゃないよ、今も。売り上げは伸ばさなくちゃいけないからね。
──どうして会社を続けられたんですか?就職したらお給料も貰えるわけじゃないですか。
でもさ、需要があってうちを求めるニーズがあって毎年クライアントが増えていくなかで「辞めよう」と思ったタイミングはないよね。「必要ねえ必要ねえ」って言われて「なんとかお願いします」って土下座しながらやってたら「これ価値ねえ」と思って辞めてたかもしれないけど。「助かったわ」とか「集客できてよかった」っていう声がお客さんが増えるごとに増えてきて。うちを求めてくれてる人もいたから「辞める」っていう選択肢はなかったかな。
──社長ってポジティブですよね?
いやいや、ネガティブだよ。結構「社長はポジティブじゃなくてはいけない」って言われるんだよね。一人で追い切れるような量じゃないよ、この苦難っていうことが今後増えていくじゃん、人が増えていったら。そういうものを乗り越えられるのかって考えたら常に不安。だって出会ったことないんだもん。でも、一回殴られたとしたらその痛みはもうわかるじゃん。だから2回目、3回目はそんなに怖くないと思うんだよね。経営してると出会い頭に殴られることって絶えず訪れるけど、それによって殴られ慣れていくのが「社長」の役目だと思ってるかな。しんどい面を言うとね(笑)
──本音をありがとうございます(笑)
ポジティブっていうのも大事なんだけど「打たれ強さ」がすごく重要だろうなと。これは社会人でもそうだと思うんだよね。俺は打たれ強くはないんだよ。でもしつこいとは思う。一旦、へこむんだけどしつこく蛇のように俺は続けるかな、なんだかんだ(笑)
失敗③現在の失敗「会社が次のフェーズに行くためには」
──だから10年も会社が続いてるんですね。10年経っても失敗はありますか?
あるよ。やっぱりイツザイが次に行くためにシンプルに大事なことって、俺がプレイヤー気質であったりとか自分でやってしまうってところを社員に移譲して、俺がいらなくなるっていう状況をつくんなきゃいけない、会社としては。人数的にもそういうフェーズに入ってきてるんだけど、いつまでも自分で細かい作業までやってるっていうのは、結構俺の中での痛い部分ではある、本当に。
──その「フェーズ」ってのは経営者の中では一般的なものなんですか?
例えば2、3人で会社をやってたら俺がガンガン営業に出てっていうのはやるしかないじゃん、人がいないから。でも今は人がいて、まだまだ仕事を受ける余地があるって言ってる人もいるのに、俺が一番案件を持って忙しくしてるっていうのは健全じゃないよね。いつまでもそんなことをやってしまっているっていうのは失敗なんだよね。
俺がやらなくちゃいけないのは、社員のみんなが営業を取れるような状況をつくったりだとか、取れてないときの叱咤激励とかそういうところに俺は時間を使うべき。
前々からそうなんだけど、俺が案件を取っちゃてて全体の数字ってなんかそれで達成してる感じになって今まで上がってきたんだよ。この6年間くらいは売り上げがずっと落ちたことがないから。それを今と同じことをやってても成長速度が毎年2,30%増とか。成長率200%増にはならないんだよね。
この話をすると周りの社長・先輩からは、「そりゃそうだよ、お前いつまでそんなことやってんの」って実は何年も前から言われてきたんだけど(笑)
──え、そうなんですか?
いつまで自分で案件取ってきて自分で運用してるんですかって。でも、イツザイのこの1年っていうのがけっこう大きくて、みんなが俺が打ち合わせに入っていなくてもちゃんとお客さんと対応できるっていうのが、しかも俺が今まで担当してきたお客さんをやってくれてるっていうのが結構俺はでかくて、要はみんなに対する信用・信頼はでかくなってきてて任せられるようになってきてる。
この年内は数字にコミットしたいのね。12月までにあと45件くらいとらないといけないのよ。そこにコミットしたくてっていうのが失敗とそれに対する対策って感じ。結構この話はサシ飲みで40代半ばの社長に俺がする話かもしんない、本音(笑)
起業してからの失敗を踏まえて、これから起業したいと思ってる方にメッセージをお願いします
早くしろよとは思うよね。「借り入れが」とか、「まず2、300万はないと始められなくて」っていう人は無理なんじゃないかと思ったかな。俺は貯金ない状態で始めてるからね、やる人はやるし、やらない人はやらないし。賢いなと思うのは、やりたいことがあってそのためにはどういう会社に勤めてどんなスキルを身に着けて……っていう人もいるからね。そういう風に計画的に経験積んで起業するっていうのはすごいなって思うけど。それでも始めてしまえば思ってたことと違うこともあるし、合う合わないもあるじゃん。向いてないとか、そういう判断は早い方がよくて。だから早く始めなよと思うね。
──インタビューありがとうございました!
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