社長メンタル

なぜ就活をするのか?海外に出たことが起業のきっかけに

2021/11/12 社長メンタル起業失敗談

一般社団法人一燈こどもの王国保育園/株式会社グローカルアース 藤本正樹 社長

【一般社団法人一燈こどもの王国保育園】設立:2017年

「自分で考え行動し責任を持つ人を育てる」を根本理念として、数十年先の子どもたちの人生までを本気で考え育むために設立された保育園です。日々の保育における「8つの大切」と、新しい時代に対応するための「3つの特長」をかかげ、小規模園ならではのアットホームさと誰にも負けない保育への情熱が自慢の保育園です。

【株式会社グローカルアース】設立:2016年

・「グローバル」「世界」「夢の実現」「人権教育」「国際理解教育」「平和教育」「キャリア教育」「道徳教育」などを主テーマとした講演や出前授業、研修の実施

・旅をテーマにした記事や書籍の執筆、国内外における世界の現状の視察業務

独りよがりに頑固になってもダメ、もっと素直になればよかった

──保育園の経営をされる前は世界一周や教員など、いろいろなことに挑戦されていますが転機となった出来事はありますか?

海外に出たことですね。バックパッカーへの憧れはあったんですど、それまでは踏み出せなかったんですよ。

大学に入学して、一度取り組んでみたかったスキーを本格的に始めたらはまってしまい、その道で勝負したいと思って就活をしなかったんです。要は、夢追い人みたいな。

卒業後の選手活動の中でスキーの練習でニュージーランドに滞在したのですが、旅をしている人とか面白い生き方をしている人が集まってくるんですよね。

そんな道を選んだわけですが、就職活動という経験はしておきたかったなと思います。

──それはどうしてですか?

学生という立場を利用して色んな会社を堂々と見られるということは貴重なことなんだなと。

──私が就活しているときは、そんな貴重だなんて思ってなかったです(笑)

学生の時はあまり思わないものですよ。

僕はキャリア教育の授業で学校などでよく話をするのですが、就活のことを話せないんですよ。僕的には違う道を歩んだよという話はできるけど、そこは弱みと言えば弱みだなと。

──なんで就活しなかったんですか?

一番の理由はスキーをしたかったことなのですが、モヤモヤもしていたんです。

ほとんどの人が夢とか目標持ってないんですけど、時期が来たからとりあえず決められた階段のように就活するっていう姿を見て、人生それでいいのかと思いました。じゃあどうしたいのかと自分に問いかけたら、スキーに夢中で本当に楽しかったのでこの道に行こうと。

でも、これは半分はカッコつけているだけで、半分の本音は逃げと言えば逃げの部分があったのかもしれないですね。

──私も同じようにモヤモヤしてました。有名な企業に入ることが良いことなの?って。

一緒ですよ。でも実際には、いわゆる一般的なレールを外れるわけなので恐怖はありました。振り返ってみると、あそこでみんなと同じように流れに乗っていたという経験がないことは弱みと言えば弱みでもあるなと思います。

──それって結局ないものねだりですよね。普通に就職してたら、スキーやっておけば良かったとも思いそうですね。でも、就活に疑問を持っている人は多いと思います。

みんなめちゃくちゃ思っていると思いますよ。でも、それ以外の道をなかなか選べない。だって、起業するとなっても失敗したらどうするかと心配になるし、どう始めるのかとかも分からない。どこかに就職したらお給料はもらえるわけなので、そりゃ疑問があってもなかなかそれ以外に行けないですよね。

当時は、正社員にならずに生きていることへの劣等感も正直ありました。でも、ちょっと違う生き方をしていることへの優越感と、同時にけっこうな恐怖もありました。

──その時ってその恐怖がずっと続くような感じがしてしまうと思うんですけど、どうやって気持ちを切り替えていったんですか?

前向きにはなれていなかったですよ。なんせスキーがまったく上手にならず(笑)、成績が上がらなったですからね

でも、ニュージーランドやスキーを引退した後にワーキングホリデーで滞在したオーストラリアなど他の国をたくさん見て、こんなに色んな事があるんだったら悩むことなんかないんじゃないかって。

世界一周をする中で、路上でそのまま死んでしまうような子供たちを見て、自分の人生を見る目が変わりました。就職したからどうとか正社員がどうとかなんてくだらないことで、そんなことで悩んでどうする、俺!と思いました。

スキーがすごく上手になって、自分の思うような成績が出ていたら、それはまた違ったかもしれません。でもまったくそうではなかったんですよ。

──就活をしないで、スキーをする道を選んだ中での失敗はありますか?

下手クソな自分が悔しくて、自分一人で上手くなって見返してやろうと思い、頑固になりすぎていました。人の言うことを聞かずに自分だけの力でなんとかしてやろうとし過ぎて、自分一人だけで練習をしていた。

一生懸命やっているときは素直じゃなった。練習方法をもっと柔軟に、もっと楽しみながら、素直になればよかったなと。

今仕事をする上でも、人の意見を聞かないで頑固にやってもしょうがないですよね。

──独りよがりで頑固になっても駄目というのがその失敗から得た教訓なんですね。

──藤本社長が世界一周に2回行ってみて気づいたことってなんですか?

日本のことが全然わかってないということですね。

他の国に行って日本のことを聞かれたときに自分の国のことをなかなか説明できない。

──例えばどんなことを聞かれるんですか?

日本人は桜を見ながらパーティーをしてるけど、なんでそんなことをしてるのか、いつからしてるの?と(笑)

──たしかに、お花見の意味とか考えたことないから聞かれても分からないです(笑)

あとは、「禅」とは何かとか、「武道」とは何かとか…。

そういう質問をされる度に、日本のこと全然わかってないなと思い知らされました。

自分はこう思っているとか、自分の意見はこうだとかを、自分で考えて発信する。これが日本の教育の中で欠けていることですよね。指示されたら素早く動くけど指示されないと動けない。

僕らの保育園の理念「自分で考え行動し責任を持つ人を育てる」があるのは、そこを変えたいからなんです。この理念は子どもたちだけでなく、職員も含めて非常に大切にしています。

学校などで講演をするとき、よくワークを入れるのですが、その中である意味一番難しいのは自己紹介なんです。1分間で自分の夢とか目標を必ず入れて自己紹介しましょうと。「もっとこの人のことを知りたい」と思わせる自己紹介って本当に難しいですね。

こういうことをやっているといかに自分の足元がわかってないんだなと気づかされます。

「自分にはこういう思いがある」というのがあるからこそ、色んな世界を見たときに色んなことが考えられる。

自分がないと振り回されちゃうだけなんですよ。そういう点では会社の経営も一緒かな。

【起業の失敗】補助金・助成金をちゃんと調べておけばよかった!

──保育園の経営のなかでの失敗はありますか?

最初は行政からの助成金がまったくない認可外保育園としてスタートしたんです。でも、これが甘かった!

もちろんそれなりに計算はしていましたが、助成金がないと保育料を高く設定しなければいけなくなります。しかし、それでは園児を集めることが当然大変になってしまう。行政の補助を受けない状態での運営は、なかなかに苦しかったです。

このままではダメだと思った時に、企業主導型保育事業という内閣府が始めた新しい助成制度がちょうど始まったんです。その申請ができたことは本当によかった。

でもこの制度、実はもう1年早くから始まっていたんですよね。

もっとちゃんと調べておくべきだったと思いました。これは失敗は失敗でしたね。

その経験があったから補助金、助成金をちゃんと調べて申請することの大切さが本当によくわかりました。

みんなとうまくやらないといけないと思っていた

──保育園の経営をされていて、資金的な面ではなくコミュニケーションの面で大変だったことはありますか?

「こどもの王国保育園」を始める前は、「みんなと全てをうまくやらないといけない」という思いが強かったですね。

みんなと全てをバッチリ合わせなければいけないのではないかと。

だけど、そんなに全てを合わせられるはずがないんですよね、違う人間なんだから。合わない部分があってもそれでいいわけだし、全てを合わせる必要はないな、というのがよくわかってきました。

保育園の理事のメンバーが3人いるのですが、最初の頃はよくケンカしていたんです。大元の想いは一緒なんだけど、人間だからそれぞれ違うんですよね。でも最初は全部を合わせなければいけないと思っていたんです。

だけど途中から、根本的な方針とか向かっている方向が一緒だったら、あとは違う部分があっても、根本が同じなら気にしなくていいと思えるようになったのは大きいですね。

──どこかに所属するときはみんなとうまくやっていきたいと思います。でもそれがいきすぎると、ちょっとストレスに感じますね。

難しいバランスなんですけど、ほどほどに合わせるし、他の人の意見をほどほどに聞く。違うとイラっとすることもあるけど、人が違うんだからそれは当然のことですよね。

──いつからそう思えるようになったんですか?

ここ1、2年ですよ。他の理事と何回も揉めたりしたときに、ある知人にちょっと相談したのですが、その時に「良いんじゃない?全部合わせなくて」と言われて腑に落ちました。

それまではプライベートのことまで全部の価値観を合わせないといけないとまで思っていたんですけど、そこまで合わせる必要はないんだよなと。

会社の方針として大きく外れてしまうようだったらまずいけど、そうじゃなかったらそれでいいやと思うようになってからかなり楽になりました。

──その考えになってからはうまくいくようになったんですか?

自分の気持ちが楽になったのが一番ですね。それが自然と周りにも良い影響になっていったように思います。

──保育園の経営と世界一周のお話は、かけ離れているようで人との接し方や自分のことをよく知る大切さという部分で繋がっているんですね!

インタビューありがとうございました。

株式会社グローカルアース/こどもの王国保育園のHPはこちら

https://www.grocal-earth.com/

http://childkingdom.ed.jp/

 

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