人間関係のトラブル
「正論が正しいわけではない」コミュニケーションは永遠の課題と語る宮沢社長の失敗談
2021/09/27 人間関係のトラブル起業失敗談
株式会社ユナイテッドマインドジャパン 宮沢光平社長の失敗談
【事業内容】
住宅業界特化型人材紹介、PR支援事業
外国人材紹介事業
マンガメディアを活用したダイバーシティ促進事業
人材紹介を中心に日本企業のダイバーシティ化を支援する事業を展開している企業を運営されています。
失敗①第一志望だった会社の最終選考でやってしまったこと
──まずはサラリーマン時代について教えてください。どのような会社で働かれていたんですか?
IT企業で5年間、その後は健康食品メーカーで3年間、営業から始まり、事業部長、経営企画等のポジションで働いていました。
就職活動の時に考えていたのが、新しいアイデアを考えて、人に見せられるような面白い仕事がしたいということだったんです。「あれ、実は私がやりました」っていう感じで。
一番行きたかったところは、某大手玩具メーカーなんですけど最終面接で落ちちゃって。そこでITの会社に入りました。
当時、IT業界は特にBtoBの会社が多くて、あまり街中で人目につくような技術に直接取り組んでいる会社は少なかったんです。でも、私が入った外資系の会社は、自社が持つスーパーコンピューターの最終形態はドラえもんのようなロボットなんだと言う会社だったんです。サービスロボットはまさに目に見えるものだし、未来的な技術で世の中に浸透させるためには、いろんなアイデアが必要になるだろうと思って、その会社に入りました。
──あの某大手玩具メーカーに最終選考まで残ったんですか!?
2万人中最後の7人くらいに残ったんですけど、最終面接で突然、「会社って誰のものだと思います?」という質問が飛んできたんですよね。
なんて答えます?
──株主……?ですかね。
それが普通だと思います。当時ホリエモンや村上ファンドのニュースが連日報道されていた時期だったと思います。その中で「新聞読んでる?」ということも含めた質問だったんでしょう。
「従業員のもの」って言えればまだましだったんですけど、パッと勢いで「上の者、社長とかが牛耳ってるものではない」って言い方をしたんですよね。その瞬間に私の選考シートが横によけられた気がしました(笑)
──それ見ちゃったら頭の中真っ白になりますね……
「あ、やばい」って焦ってるから、最後に「アイデアを考えてきたんです」って言ってIT技術と融合したおもちゃのアイデアシートを面接官の方々に配って……
これも強引ですよね(笑)
──それはだめなんですか?
相手はプロですからね。それこそガンダムを生んだ人とかも最終面接にいましたから。そのプロに対して、学生レベルのアイデアをもってこられてもって、感じですよ。何より、空気を読めていないですよね。グループ面接終了のタイミングを遮って、アイデアを配りましたから。案の定、落ちましたね。
──それって相性もありますよね。おもしろいと買ってくれるところもあると思うんですよ。
うーん。2つ重なりましたからね。ただの馬鹿だと思われたんですよ。勢いがあって面白そうなやつだなってことで最終面接まで上がれたと思うんですけど、ただの馬鹿はどこの企業もいらないですよね。
──それはショックですよね。私も最終選考で落ちた時はだいぶ落ち込みました(笑)
就職活動って30社、40社ぐらい受けるのが当たり前だと思うんですけど、一番初めに受けたオンラインゲームのベンチャー企業に合格したのもあって、調子に乗ってましたね。一番大事なところで失敗しちゃいました。
失敗②会社でナンバーワンになりたいという思いが強すぎた
──ITの会社に入社されて、1年目の時はどんな感じだったんですか?
バリバリやっていましたよ。将来的には社長をやりたかったですし。まずは、営業マンとしてナンバーワンになるんだという思いが強すぎるぐらいでした。同期が28人いましたけど「絶対に負けたくない」と思っていました。
──え、何が問題なんですか?
意識高い系って、やり過ぎると、ある部分で引かれるじゃないですか。相手のことを考えない独りよがりだと、周りから人はいなくなりますよね。そういう態度って、同僚だけでなく、お客様にも伝わるんです。
そういう意味で、私は上手な営業マンではなかったと思います。
──上手な営業マンってどういう人ですか?
上手な営業マンは同僚、上司等、周りの人やお客様とのコミュニケーションの中で成績を残しますよね。
あと、売れる営業マンは3割くらいしかしゃべらない。営業は聞いて、お客様のニーズを開拓する仕事だから、売れる営業マンってしゃべり続けないですよね。
──営業って聞くと話がうまい人かと……
そういうイメージもあると思うんですけど、喋らせるのがうまいんですよ。
興味をもって相手の話を聞くのが大事だと思います。ただ、相手の話に興味をもたず調子を合わせるだけでは、それは相手に伝わります。そして、その空間はポジティブなものでなくなります。
失敗③人とのコミュニケーションは「正しい」ことが正解なわけじゃない
──起業しようと思った理由はなんだったんですか?
父が経営者というのは大きかったです。あとは昔から、自分の思い描いた世界を創ることが好きでした。中学生の時は、文化祭の演劇の脚本家に立候補したりとか、高校時代は唄を作ってストリートライブをやったり、大学時代はお笑いと演劇をやっていました。
──そういえば、M1グランプリに出場されたことがあるんですよね?
大学2年生の時にインターネット掲示板でお笑いの相方を探してコンビを組みました。下北沢とかのライブハウスでネタをやったりしていたんですよ。笑いが取れた時もあったし手ごたえもあった。でも、その相方が大学3年の時に「就職する」と言っていきなり姿を消してしまって……
それで結局、M1グランプリにはその時の彼女と出ることになったんですよ(笑)男女コンビとして出場したんですけど、大惨敗でしたよね。人生で一番長い3分間でした。
──やっぱり笑わせるって難しいんですね。
難しかったですね。ここにもコミュニケーションの課題がありました。
大学のお笑いサークルで2年上の先輩に、TVに出ていて、後にM1グランプリの決勝にも出たプロの芸人がいました。その先輩に言われたのが「君のネタはすごくいいんだけど、お客さんと会話ができてないね」ということだったんです。
お笑いって、お客さんと呼吸を合わせて笑いを作るところがあるんですよ。私は、お笑いをやり始めた頃、ピン芸人だったので、学校の屋上に忍び込んで一人でずっと練習していたんです。
それでいざ本番となったときに、同じテンションでネタをしたんですね。それだと、笑いはおきないですよね。お客さんとの呼吸がちぐはぐですから。
でも、こういうコミュニケーションの課題は、ずっとありましたね。少しずつなんか分かってきたかなっていうのが。今から2年前くらいじゃないですかね。
──そのコミュニケーションの課題とはどういうことでしょう?
私は、自分の描くストーリーに必要なピースを探してきて、それを当てはめる作業をしてきたんだなと。相対的ではなく、絶対的な自分の世界観を成立させるためにコミュニケーションをしてきたんだと感じるんです。
営業時代のロボットを売っていた時にも先輩に「お前、質問する時にさ、客を自分が欲しい答えに誘導しているよね」って言われました。
営業マンは相手の本音を引き出さないといけないから、その時に、オープンクエスチョンを活用すると思うんです。相手の答え方によって、どのくらい買う意欲があるかなとか見極めなければいけない。
例えば、予算を聞く時も「いくらありますか?」と素直に聞けたらいいんだけど「2千万円くらいはありますかね?」と聞いたりして。
多分、当時私は、イレギュラーな回答で、私のストーリーが崩されることが怖かったんですよね。質問で相手に負担をかけることも怖かった。「Yes」「No」で答えられる質問の方が、相手に負担もなく、自分のストーリーに都合のいいように誘導尋問が出来る。
──答える方としてはそっちの方が答えやすそうですけど、ダメなんですか?
警察としては優秀かもしれないですけど、営業マンとしてはダメです(笑)お客様の本音じゃない建前のストーリーが出来上がって、お客様のニーズが見えなくなります。
自分で世界を創りたいという性格が、悪い方に働いた結果ですよね。とにかくストーリーを完成させるために自分で8割イメージをつくってそこにパズルをはめようとしていたんでしょうね。それが失敗に繋がったということだと思います。
──きっと演劇の脚本とかお笑いのネタの構成を考えるのと同じ感じなんですね。
そうですね。小説家なら「僕のストーリーの中には入ってこないで」と言えちゃうかもしれない。でも営業マンではダメです。
──2年前くらいにそのことがわかるようになってきたとておっしゃっていましたが、何かきっかけがあったんですか?
いろんな場面を振り返ることで確信に変わってきた感じですけど、大きなきっかけは、28歳ぐらいのときですね。健康食品メーカーで、会社全体の各部門を取りまとめる仕事をしていたことがあります。私は、ITの会社でやってきたようにロジックで「こうですよね」とひとつひとつ詰めていくわけ。その時、カスタマ―サポート部の60歳くらいのオペレーターの方に「宮ちゃん、言っていることは正しいのかもしれないけど、私好きじゃないのそれ。やりたくないんだもん」って言われたんですよ(笑)
その時は「はあ?」と思いましたね。ロジカルシンキングだって、散々東京で言われてきていましたから、論破することが正解だと思ってました。でも、人とのコミュニケーションは「正しい」ことが正解ではないんですよね。
例え正しくても言い方を間違えれば、目の前の相手を説得することは出来ないこともあります。相手と意見がずれていても、相手の意見をしっかり受け入れて、最終的にお互いにとって最適な答えを出せる人がコミュニケーション上手な人だと思います。
失敗④営業での失敗「時間と体調の管理ができなかった」
──1年目は営業だったんですよね、その頃の失敗はありますか?
基本的なところだと、遅刻ですね。時間のコントロールができませんでした。夜遅くまで毎日仕事する。朝は眠くなるから、あまりご飯を食べずに行って、自分の身体を気にしないで突っ走ってましたね。
とても、不器用でしたね。当時は気合と根性。どんな形でも、やればやっただけ自分に返ってくるし、成果が出ると思っていました。
──器用な人っていますよね。時間管理がしっかりしていて、仕事をぱっと終わらせて帰る人とか。
いますよね。でも最初からそんな器用にこなせる人は少ないと思いますよ。
──みんな、量をこなしてから器用にできるようになるんですか?
なんでもそうだと思います。本気で上を目指したいと言っている新人が、何も知らない世界に入ってきて、自分自身のライフスタイルを語り、「早く帰って早く寝るんです」って言ってたら、成長は無いと思います。それじゃあ自分の限界がわからないじゃないですか。己で限界を決めつけていたら自分の知らない景色を見ることは出来ないですよね。
──私も今、1年目なんですけど全然できるようにならないし、効率よくとか質のいい仕事ってなんだって思っていました。
5年選手、10年選手になっていくと質はどんどん上がっていくと思います。でも最初のうちは難しいですよね。センスがある人はいます。でも、そういう人が量をこなしたらもっと成長できると思います。
失敗⑤もっと投資をするべき
──経営されてきた中で一番の失敗はなんですか?
大きいのはコミュニケーションですね。もうひとつあげるとすれば、ケチなところですかね。もっと大胆に投資してくればよかったなって。とくに人材紹介はサービス業ですから、でっかい倉庫を買ってとかはしなくていいんですよ。コストがかからないからあまりお金を使う感覚が身につかない。
経営は大きくお金を使って大きく回収するっていうのを繰り返さないと、成長しないと思っています。
もう一つは、選択と集中ですかね。
──人材紹介以外にもやられていたことがあるんですか?
外国人材の紹介をメインに事業を始めたんですけど、外国人材紹介事業と相乗効果があるところで、日中のアニメーション文化促進のためにコンサルティングをやってくれみたいな話があったらそれに飛びついて準備してみたり、日本のアニメオタクがアニメ好き外国人をガイドするというマッチングビジネスを立ち上げようと走ってみたり。
でもメイン事業の基盤がしっかりしてない中で手を出していたら、うまくはいかないですよね。気持ちもリソースも分散します。
──なぜ外国人材に仕事を提供することで起業をしようと思ったんですか?
とにかく世界に出て仕事をしたかったんです。小学生の時の文集に書いた将来の夢が「海賊になって世界を飛び回り、宝を発見する」でしたから。
何となく、小さいころから、まだ見ぬ世界に憧れを抱いてましたし、そこで何かしたいという好奇心はありました。
約8年前、起業にあたって、いろいろな人に話を聞いたんです。その中で、SNS経由で日本に住んでいる外国人300人とつながり、実際に会って話をしました。すると、「この国は日本語が話せないと仕事がないのか」と言っている人が多かったんです。
じゃあ、この人たちに仕事を紹介できたらビジネスになるんじゃないだろうかって思いました。しかも、日本は高齢社会で労働人口が減るっていうのがデータで出ていましたからね。
まずは、Facebookでベトナム語で「日本で仕事を探す人のコミュニティ」を作ったらどんどん「いいね」がついていきました。予想以上の伸びでびっくりしました。
──それだけみんな困っていたんですね。外国の方とのコミュニケーションで大変なことはありましたか?
面接当日に時間に遅れる、履歴書を持ってこない、写真が貼ってない、履歴書がぐちゃぐちゃで汚いとか……いろいろありました。今考えると、日本の学生が文化の違う海外に行っても、少なからずそういうことはあるのかなとは思いますけど。
対策が必要だと思って、集合時間を前倒しにしたり、大事な部分は母国語で伝えたりしました。
ただ、この仕事は、とても気疲れするし、それを従業員に担当してもらうと、ストレスが溜まって辞める人も多かった現実もあります。
失敗を踏まえて今後の株式会社ユナイテッドマインドジャパンの展望を教えてください。
外国人と日本人、場合によっては宇宙人、未来人、みんなが一緒に生きていける社会をつくりたいです。外国人紹介というのは一つの通過点でしかないと思っています。
異文化が繋がりあい誰もがキラメける社会を作るという意味では、外国人だけでなく、宇宙人、未来人、ロボットとの共生にも同じことが言えると思うんです。これまでのノウハウを活用して、そういうことを追い続けていきたいと思っています。
但し、外国人と日本人の共生はそんなに簡単じゃありません。私たちは、今は日本人の人材紹介を中心に行っています。特に、人が生きる事に密接に結びつく住宅業界をメインターゲットにしています。これからは、様々な業界の企業様にこちらのロジックで強引に外国人を紹介していくのではなく、真にダイバーシティ経営を考えている企業様に日本人材を紹介することで、関係を作り、少しずつ外国人材の紹介を成立させていきたいと考えています。
外国人材の紹介は、一つ一つの企業様に、冷静に向き合ってその企業様のリズムの中で外国人も含めた人材採用を進めていくべきだと考えています。
そこを実現して日本のダイバーシティ化が進めることが出来たのなら、いよいよ世界に挑戦したいなと。ジレンマの一つでもあったんですよ。私は、世界に出たくてビジネスを始めたんですけど、このビジネスって、世界とつながりはあるけど、主戦場は、日本なんだよなって。早く、まだ見ぬ世界の宝を探しに船を出していきたいですよね。
──本日はお時間をいただきありがとうございました!
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