仕事のやらかし

10代の頃は仕事をなめていたが、感謝される仕事をしたいと思って起業することに

2021/10/01 仕事のやらかし起業失敗談

【事業内容】注文住宅/分譲住宅/リフォーム・リノベーション

【設立】1997年

失敗① 「働く」を甘く考えていたサラリーマン時代

──さっそくなんですけど、サラリーマンとして働いてる中で「これは失敗したな」という経験はありますか?

失敗なぁ……社会人……えっと、俺朝起きられへんかったからさ。

中学校から高校行って、学校すぐ辞めて。で、なんか色んなバイトしてそこから土建屋さんに就職したけど「働く」っていうことをなめくさっとったから。

だらだら休んだりとか、「俺、甘えてるな」と思った。でも、甘えてるって言われるのが当時一番嫌やった。俺一番酷いとき一か月に2日しか出勤せえへんかったことあるわ。

──それは「休みます」って言って休んでたんですか?

ううん、なんも言わんと。普通は間違いなくクビや。その時の社長さんていうのが俺が16歳で、社長さんは26歳で若かったんやわ。

めっちゃ厳しかったけど、今から考えたらやで、こいつは若いし遊びたいやろなみたいな優しい気持ちである程度大目にみてくれとったんやなと。

でもあのお陰で今があると思う。俺も社会復帰というか、しっかりちゃんとデビューしてないからさ。そこで叩き直してもらったって思ってる。だからそういう意味でいうと、感謝してるな。

──働いてて辞めたいなって思うことはありましたか?

そんなのしょっちゅう思ってた。なんかええ仕事ないかなとか、もっと簡単で楽にお金が入る仕事ないかなとか。

なんなら働かんでも誰かお金くれへんかなとかそんな甘いこと考えてた。ちゃんと頑張って価値を提供できる人間になったら豊かになるっていうことがわからんかってん。言われたことやってるやん、若いときって。

誰でもええ仕事だったら、すぐに誰かに変えられるってことやん。精神的にも経済的にも一番豊かになる方法は人ができないことの技術を身につけるっていうことをガキの頃はわからんかった。言われたことやってるだけやから。で、やらされ感でやってるから余計そうやな。

失敗②営業で「うちの会社にお家づくりを任せてください」と言えなかった

──そこからなぜ起業したいと思ったんですか?

土木作業員として働いてたけど、手に職つけたくて大工さんになって。それで大工さんから36歳のときに起業して、今51歳。

どこで誰に会うても「あんたのところで建ててもらったお家で幸せに暮らしてますよ。」って言ってもらえるような仕事したいなと思ったから、営業も設計も施工管理も全部できるようになって、正々堂々と喜んでもらって感じるやりがいも、失敗して怒られる責任も全部自分で受け止めようと思って起業してん。

──営業も設計も全部できるようになるって、最初からは無理ですよね?

会社起こした時は、家づくりには自信があったけど経理も知らんし、集客も知らんし、営業もできへんしな。

お客さんの前で初めて打合せする時さ、バリ緊張してや、もうテーブルの上が俺の落とした汗でなんかこう水溜まりになってた。で、お客さんが心配して「社長さん、体調悪いんじゃないですか?」って。

──え、そんな緊張してたんですか!だんだん慣れてくるものですか?場数踏むと。

そんなん場数や。慣れんねん。どんだけやったことないことでも人は絶対に慣れるねん。緊張するっていうのはこういうことを喋って、こんな風に思われたらどうしようとかさ。あと怒られたらどうしようとかさ、割と矢印が自分に向いてると緊張すんねん。この人にこういう風な情報を届けようとか、これをお伝えしようとか矢印が相手に向いてたら緊張せえへん。

──たしかにそうですね。自分のことばかりに目が向いちゃってるかもしれないです。私も営業やってるんですけど、なかなかうまくいかない事多くて。田尻社長が営業をし始めたころはどんな感じだったんですか?

打合せするときに俺は相手に「家建てて欲しい」と思ってるやん。相手は家建てたいから候補の中の一つとしてうちに来てくれてはるわけやんか。

で、営業の技術も知識もなかったからさ、失敗でいうと「うちで家建てて下さい」とはなんか言われへんかってん俺は。だから2時間打合せしてなんの話してたんやろって、世間話で終わるとか。そんなん普通にあったわ。

──最近、よくできる営業は仕事の話はあまりしないって聞きました。初回では仕事の話をしない営業マンもいると。

業種によるんちゃうん?新規営業じゃなくて、BtoBのルート営業とかやったらそうかもしれへんけど。初めて会うてさ、提案を受ける時に仕事の話されへんかったら「お前何しに来てんねん。」ってなる。俺やったらもう2分で帰すわ。「俺、どうでもいい話のためにこの時間とったわけちゃうねん、用件を言え用件を。」ってなる。

──でも、なんで「うちで家建てて下さい。」って言えなかったんですか?

お願いしてるみたいで嫌やから。俺のためにお客さんに家建ててもらうわけじゃないやん。お客さんが幸せになるためであって、俺らの会社の売り上げのためにお客さん家建てるんとちゃうからさ。ま、うちの会社で家を建てるかどうかはお客さんが決める事やしね。

──そうですよね。でも、営業だとやっぱり売上に意識がいってしまうじゃないですか?

まあ、数字で結果が見えちゃうからな。自分のやってるものが、クライアントの生活や人生にどういう良い影響を与えられるかっていうサービスの価値が相手に伝わらへんかったら、安かろうがどんだけええ商品だろうが売れへん。

──始めたての頃の営業と今では営業の仕方は違いますか?

昔は「どんな家にしたいですか?」って言って、いきなりガーッ図面書いて、「これぐらいの家がこんな感じで、こんな色で建ちます。」みたいなやって。「で、どうされますか?」みたいな感じやったけど、いまはもう、そもそもうちで建てる事の不安を解消してもらって設計申込みしてもらってからじゃないと図面も書かないし土地も探さないし。

まだ依頼されていないのに土地探したりするのは、お客様の要望に合ってない。

ちゃんと選んでもらうために自分達が伝えなあかん会社の姿勢とか、過去に建てていた住宅の参考例とか、あと価格とスケジュールやな。

どうされますかっていうとこにいくまでに、こういう流れで進みますっていうのを全部説明してるよ。

──お家をつくるって一大決心ですもんね。

そうや。怖いよ、3000万の買い物するって。うん、なかなかできへんで。お客さんは怖いよ、そりゃ。この会社でええんかなって思ってはる。その不安をとってあげるにはどうしたらいいかっていうところらへんも考えて体系化してやってってんな。

──お客さんからしたら大きい買い物だし、頭の中にある理想もあると思うんですよ。お客さんから「出来上がってからこんなんじゃなかった」と言われたりすることはありますか?

失敗でいうと、あ、せやこの話していこう。うちの会社もお客さんからクレームをもらうことはある。

ちょっとした行き違いとか、問題発生する。うちはクレームのことをラブコールっていってんねんけど、こういうラブコールが発生したときはみんなが入ってるグループチャットですぐに共有するようにしてるねんな。

──ラブコールっていいですね。響きがポジティブになります(笑)そのラブコールを社員さんみんなで見れるようにしてるのはなぜですか?

これをみんなですぐに共有して、3日以内に当事者と関係各社と上長が再発防止の会議をするって決まってんねん。

今回、ラブコール発生日時何がどういう連絡が入ったか、現状なにが起こっているか、その原因はなんなのか。

もうこれで色々起こしたくないし、自分の後輩や会社のスタッフにも同じような思いさしたくないなと。だから今度からチェックできるようにチェックリストに足しとこうね。チェックリストにその項目を足したと。足したから違う子が同じような状況になっても同じことにはならないよね。この報告書をきちんとお施主様や協力業者様に送るって言うルールやねん。

──たしかに。お客さんからのクレームって精神的にきますもんね。社内で共有するのは再発防止にもなるし、精神的負担も少なくなりそうです。

起業するまでと起業したての頃の失敗を聞かせていただきました。これからの会社の展望について教えてください。

これからの展望……いや、いろんなことやってんねやんか。住宅だけじゃなくて、リフォームリノベーションとか、不動産とか、あと介護施設とか。

で、保育園やってるやろ。エステティックサロンと民泊とか。まぁいろんなことやってんねんけど。

そういった形に限らず、笑顔を創造しつづけるっていううちの会社の企業理念を体現しながら、いろんな事業で地域にとってはなくてはならない会社になっていきたいなっていうのは一番の目標かな。

──起業当初に思い描いていたものと今の現状にギャップはありますか?

今と?あるある。だってこうなるなんて考えてなかったもん俺。

もっと目の前のことに追われとったよな。だから起業したときの俺が今の俺をみたらビックリすると思うけど。もうあの時は潰れる、潰れる、潰れるしか思ってなかった。

──そうだったんですか!

やばい、やばい、やばいって。だからもう事務所の電話も24時間ずっと携帯電話に転送してたし、休みの日に家族とかとどっかいってもずっと仕事のこと頭いっぱいやったし。

まぁそれは今でも一緒かな。ずーっと追われてる感じ。でもいまは15年経っておかげさまで経営的にはガチガチに安定している。

──じゃあ、今はそのころよりも余裕も出てきてということですか?

えっと、勘違いのないように伝えたいんだけど、精神的にも経済的にも豊かになるっていうのは、別に全然まだ豊かじゃないけど、自分がどれだけの人にどれだけのよい影響や価値を与えられたかに正比例するのかなと。

それはお金とかそんな浅い話じゃなくて、サービスとか関わりとか。

だからそれを身につける経験はビビって挑戦せんと「私向いてないな」とか「私できへんな」と思ってうまいこと逃げとったらいつまで経ってもその経験って身につかへんから、成長もでけへんよな。

たくさんの何か価値を提供できるようになったらたくさんの豊かさが訪れるんちゃうかな。

──てっきりお金が一番かと思ってました、豊かさって。

まだガキやからや。

──ハハハ。そうです(笑)

だって世の中お金だけじゃないけどお金あったら色んな事を解決できるやん。本当の幸せってお金が最低限なかったら幸せになりにくいけどさ。お金がなかったらせんでええ喧嘩いっぱいせなあかんよな、夫婦やったら。ある程度の豊かさって必要やと思う。

ただお金だけじゃなくて自分がどれだけの人から必要とされてるかって実感が精神的な豊かさになるんじゃない。いくら金あっても独りぼっちやったら寂しいやん。

──お金あっても家族とか友達がいなかったら寂しいです。

だからな、物質的なものに支配されすぎやねん。今みんな。今って昔からそうやろ。だってな、めっちゃ語弊をいうようで申し訳ないけど、お金ってちゃんとそれを生み出すだけの能力ついたらいくらでもできるもん。お金稼ぐって誰でもできる。技術やから。やけど、手段を選ばずお金儲けだけをして周りから恨みを買うよりも誰からも必要とされてる実感のほうが、俺の価値観の中では優先順位が高いな。まぁ人それぞれやけど。

──豊かさか。最後は「幸せ」について考えるお話になりましたが、その考えも今までの失敗があったからなんですね。本日はインタビューありがとうございました。

株式会社楓工務店のHPはこちら

https://www.kaedekoumuten.jp/

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