仕事のやらかし
仕事は目的を忘れると辛い作業でしかない。仕事を辞めたいと思った時は?
2022/01/27 仕事のやらかし
トーリーコミュニケーションズ株式会社 鳥澤 謙一郎 社長
【事業内容】
組織の一致団結をサポートするコミュニケーションサービス事業
コーチングを核とするビジネス研修事業
自考、自発、自走するコンサルティング事業
適性検査代理店(業績貢献できる人材を見極める)
交通事故で借金!若い時からお金は貯めておいた方が良い
──サラリーマン時代の失敗はありますか?
大学卒業後、某大手スーパーに就職しました。
その時は特にビジョンがあったわけではなく「サラリーマンをやっておくか」という気持ちだったこともあって、2年連続で昇格試験に落ちてしまったんです。でも、「自分はこんなもんじゃない」という自信と自分を試してみたいという思いから営業としてリクリートにバイトで入社しました。
しかし、入社後に自分の不注意で交通事故を起こしてしまって顔面に100針ほど縫うような大けがをしました。会社に戻るとマネージャーに「その顔では営業に出せないよ」と言われたのでひたすらテレアポをすることになりました。そのころは1日に720件の電話をしましたね。
──そんなに電話できるものですか?
それしかやることがなかったので、やるしかなかったんです。アポが取れなかったら存在意義がないわけじゃないですか。
──たしかに。その経験から得た教訓はなんだったんですか?
「お金は貯めた方が良い」ということですね。
交通事故を起こしたときに保険に入っていなかったので、丸々借金になってしまったんです。当時は貯金もなかったので貧乏生活になりました。
若い時は、お金を使った方が良いという大人もいると思うんですけど、全然ダメ。目的をもってきちんとお金は大事にした方が良いです。
──年齢が上がっていけば貯金するようになるから若いうちはお金を使った方が良いと聞いたことがあります。
貯まらない、貯まらない。
目的があってお金を使うのであれば投資になって良いと思うんですけど、何も考えずに欲望のまま使うとよくないです。
──その借金はどうしたんですか?
すごく運が良いことに、たまたま先輩が不動産会社をやっていて、海外の方に部屋を貸しているビルのオーナーだったんです。家賃は無料でいいし、仕事は家賃の徴収と掃除をするだけでいいから、マネージャーをしないかと誘ってくれました。
それで浮いた家賃分を借金の返済にあてていました。そのおかげで貯金の習慣もつきましたね。
営業のノルマ達成が目的になってしまっていた
──営業で大変だったことはありますか?
売れれば良い、目先の利益を優先してしまってクレームにつながったり長いお付き合いができなかったりしたことがあります。何のためにこの仕事をしているのかという意識が大事でしょうね。
リクルートは3か月で数字を取って月ごと週ごと、日ごとで目標の数字を業務レベルに落とし込むんです。今日は何をするべきか明確な分、何のためにという部分が抜けて数字マシーンになってしまうんです。
数字をあげることが目的となってしまって中身がない。だから、多少お客さんにうまいことを言って契約が取れたら自分のノルマは達成するわけで……これダメですよね。どうしてこのサービスが必要なのか、その企業に合わせて話をして提案をしないと。
自分が儲かりたいからという理由だと誰もやりたいとは思わないですよね。
──営業だと数字ででてしまう分、数字が目的となってしまう気持ちは分かります……
そこは難しいですよね。これは本当にお客さんのためなのか、自分だから提供できるサービスは何かを問いたださないといけないですよね。
サラリーマンだと義務があるからやることがあると思うんですけど、それが行き過ぎてしまうと「しなければならない」となってしまう。
道徳のない経済は罪悪、経済のない道徳は寝言です。事業はバランスです。
──仕事をやりたくないと思う人は「しなければならない」と考えてしまって、仕事の目的や意義を忘れてしまうんですね。
私はいまコーチングを核にしたコミュニケーションサービス事業をしているのですが、その時に「会社のことは置いておいて、あなたの夢はなんですか?」と聞くようにしています。その夢やありたい姿を軸に仕事を捉えたら、自分事になるじゃないですか。でも、仕事を辛いと思っているときはその視点がないんです。
──実際に鳥澤社長が「仕事しんどいな」という経験があったんですか?
そうです。最初に就職した某大手スーパーでの経験が活きていると思います。りんごを売るために大学を卒業したんじゃないし、何のためにこの仕事やっているのかと考えてました。でも、当時は仕事の意味を考えていませんでしたね。なので、そこを考えさせることが大事なんだなと思います。
給料をもらっているからこの仕事をやらないといけないという考えだと疲れちゃうんですよ。自分の考えを変換する、「私と会社」ではなくて「私の会社」と考える。そういったコミュニケーションを私は広げていきたいと思っています。
──社員一人ひとりがそう考えるようになると会社もよくなりそうですね。
「会社のことは考えなくていい。まずは、自分の人生を充実させましょう」の方が自然と愛社精神が湧きますよね。自己成長が会社の成長になります。会社、業界で必要に人になり、他社からヘッドハンティングされるくらい力をつけたら良いと思います。
仕事をするという意味では同じですけど、「人生どうしたいのか」と考えた方が頑張ろうかなという気持ちになると思います。
固定観念に縛られず人よりも動くことで営業成績が足りない時に助けてもらえた
仕事と向き合う考え方もそうですが、実際に行動に移せるかも大事ですね。
バブルが崩壊した頃は、売れずに営業のみんなは困っていたんです。いくら景気が悪いと言っても、自分の仕事は売り上げをあげることだったので頑張っていました。
私はどちらかというと頭で考えるよりも実際に体験して学ぶ方だったので、固定概念に縛られずに行動していました。すると、大手の会社に営業しに行ったら契約が取れたりだとか。固定概念がないからラッキー受注があったわけなんです。
頑張っている人は応援したくなるじゃないですか。頭が良くて言うことはやるんだけど、行動しない人よりもがむしゃらに行動している人からは勇気も貰えたりするんですよね。それもあって、僕の営業成績が足りてない時に先輩が数字をくれたりして応援してくれたんですよ。
仕事を頑張っていたのもあって体調を崩してしまい営業ができない時もあったんですけど、お客さんがリピートしてくれて営業成績を達成したこともありました。なので、本当に地道な努力が味方につきましたね。
──頑張っていたからそういうラッキーなことがあったんですね。
そうですね。たくさんの行動をすることでチャンスが生まれるということを実感しました。
成功している人に共通することは「他者への敬意」
──起業したきっかけは?
役職への憧れがあって、なんとなくリーダーになりたいという思いがありました。実際に、社内でリーダーになれたんですけど、ビジョンがなかったので降格してしまいました。「俺のために働け」というのでは誰も働きません。
リーダーの役割は部下の物心両面の幸せを実現することです。部下の話をきちんと聞け、部下の最良の支援です。立場でなく、尊敬で動くのが良いですね。
──当時は自分がリーダーで、みんなに働かせるという考えだったんですか?
そうですね。その降格と、母親が亡くなったことで色々と考えることがありましたね。私は月に一度、お墓参りに行くんですけど、母のお墓には必ず花があるんです。母の友人がやってくれていて、なので私は母の日にその方に毎年お菓子を送らせてもらっているんです。送らなくていいと言われたんですけど、天国の母が喜ぶために送らせてくれと。
その経験からコミュニケーションの取り方も変わりました。後輩に偉そうな態度をしていたんですけど、後輩への関わり方も横目線に変わったんです。まず、その後輩に寄り添い、本当はどうしたいのかを聞くと後輩も心を開き自発的になりますね。
それが事業をしようと思ったきっかけです。
コーチングを学んだ時に、友人から誕生日は両親に花を贈る日だと教わったんです。母親、父親が言うことに対して私は「うるさいな」と思っていたんです。でも、成功している人の唯一の共通点は全員が親孝行を大事にしていることなんですよ。だから「親孝行は絶対」ですね。みんな当たり前だと思うじゃないですか。
お客様ニーズ、気持ち、愛などは目に見えませんが、目に見えないことが見え、感じることが成功の秘訣です。
──たしかに。学費払ってもらうのも当たり前だと思っていました。
「有難う」と感謝することは難しいとも思うんですけど、その心持ちが自分を豊かにするのだと思います。無自覚でいると無いこと探しすると不平不満、意識してあること探しをすると有難い、温かい気持になります。
──お金のことや日々の努力、親への感謝など日常にあるものをきちんと大切にするのが大事なんですね。特に親への感謝の話は耳が痛かったです……。インタビューありがとうございました!