仕事のやらかし

仕事で感情のコントロールができなかった。自分の内面と向き合うことが起業のきっかけに。

2021/11/25 仕事のやらかし

【事業内容】

グローバル・コネクト 関口千恵 代表

経営者向けに英語学習サービスを提供。

著書の「捨てる英語勉強法」明日香出版社では、世界50ヶ国以上の人と出会ってきた経験をもとに語学の達人の勉強法を伝授。間違った勉強法や思い込みによる語学の修行みたいなツライ勉強ではなく「楽しい英語」を!

とても明るくポジティブな印象の関口代表ですが、過去には様々な失敗が……

起業するきっかけになったのは「職場で泣いてしまう」という失敗

──今までのキャリアの中でターニングポイントはありますか?

証券会社に勤めて4年目の時にロンドンに転勤する話をもらったんです。そこでの失敗と経験が起業につながりました。

──私も海外で働くことに憧れは抱いていますけど、いざ行くとしたら怖いです。

当時はキャリアの方向性に悩んでいて、会社を辞めようと思っていたので迷いもありましたけど、このチャンスは滅多にないと思ってチャレンジしました。

普通は日本人だからできる仕事があって転勤するケースが多くて、結局は海外に行っても日本語を使う仕事が多かったりするんですけど、私の場合はたまたまイギリス人が普段やっている仕事をやらせてもらえるということで、スキルを身に付けるには一番いいなと思いましたね。

──ロンドンで働いているときの失敗とは何だったんですか?

昔から何かあるとすぐに泣いてしまうというのがあって……

当時は英語がよくわからない中での仕事や、会社の業績が悪くて頻繁に人員削減など日々の色んなことでいっぱいいっぱいでした。

その状況の中で、アイルランド人の同僚に私のちょっとした英語の間違えをからかわれた時にフロアで号泣してしまったんです。

──泣いてしまうということは以前にもあったんですか?

入社して2年目の時にも、仲の良い先輩を怒らせるようなことを無意識にしちゃったんですよ。その先輩から注意を受けたときに、自分はいけないことをしてしまったと思って泣いてしまったことがありました。

職場で泣くって子供っぽいし、泣きたくないじゃないですか。私にとって職場というプロフェッショナルな場で泣くというのは失敗と同義でした。

その時になんで自分でコントロールできないのかを考えた時に、何か心理的な問題だろうと思ってカウンセリングに通うようになりました。

──カウンセリングに通うってなんとなく勇気のいることだと思ってしまいます。

当時、日本ではまだカウンセリングというと心を病んでいる人が通うイメージが強かったんですけど、イギリスではより一般的な存在でした。

──カウンセリングに通うようになって変化があったんですか?

結局なにか明確な原因を突き止められたわけではなかったんですけど、自分の内面と向き合うのが面白くて心理学の講座を学ぶようになったり、カウンセリングやコーチングの世界に興味を持つようになりました。

自分でもどうやってやめたらいいのかわからない「職場で泣いてしまう」という失敗が、将来はそうした分野で起業しようと思うきっかけになりましたね。

上司からの指摘を素直に受け入れられずに、いちいち反発してしまっていた

──起業する前にコンサル業界に転職されているんですよね?

イギリス滞在中に起業することは決めてはいましたけど、まだ社会人として全部やり切ったという感覚がなく、いきなり会社を辞める勇気がなかったんです。

それで起業したいと思っていたコーチングの仕事と一番近いのは人事組織の分野だと思ってコンサルティングファームの人事組織専門のチームに転職しました。

──そこではどんな失敗があったんですか?

その会社は新卒で入社してる方と中途入社の方の半々だったんですだけど、新卒の方たちは社会人1、2年目とかでも上場企業の社長さんと会ったりする人もいるし、すごいみんな仕事ができるという感じで……

私はゼロからのスタートだったので、周りの年下の子たちより仕事ができないことがありました。

でも、何より問題だったのは、自分が仕事をできないということを認められなかったことですね。

例えば、すごく時間をかけて作った資料に上司から「ここが違う」と指摘されたときに、私もついつい「私はこういう風に考えました」と言ってしまったりしていて……

──なるほど。素直に受け入れられなかったんですね。

そうそう。上司にとっては面倒くさかったと思うんです。お客さんに喜んでもらえるものを出すために見てくれているのに、私が素直に受け入れられてなくて。

上司は、私をダメと言いたいわけではなくて育てているという気持ちが大きかったと思うのですが、それにいちいち反発してきていたら勝手にしろという気持ちにもなって応援されなくなってしまうんですよね。

自分では100%で頑張っているつもりでいるのに、「なんでダメと言われるのか」と当時は思ってたんだけど、仕事だから自分に足りない部分を埋めてやっとお客さんのところに持っていけるわけで。

──そうですよね。でも上司からの指摘に反発、意見できる強さは正直うらやましいです。

昇進できると言われてたのに、やっぱりダメになったりすることがあって……

そういう部分が成長の邪魔をして、結果的になかなか昇進できなくて悔しい思いをしました。

それもやっぱり、素直に受け入れて「ありがとうございます」とか「次はこうします」とか素直な感じだったらもっとよかったと思うんです。

私はがんばっているつもりなのに全然評価してもらえないみたいな。その時の自分の在り方が違ったら全然結果もかわっていただろうなと思います。

自分がだめだとわかってるからそうしちゃってたと思うんです。それをすることによってダメージを負っているのは結局自分だからもっと素直にできればよかったなと。

──その経験が活きたことはありますか?

自分が管理職になった時に、昔の自分と似た人をみかけたことがありました。すごく仕事ができるのになんで昇進してないんだろうと。

周りの人に聞いたら、何か指摘しても素直に対応してもらえなくて、そうするとチームワークを乱すし、チームとしての効率が落ちるからと。その話を聞いたときに昔の自分みたいだなと思いました。

その人も昔の私みたいに足りないところがあるってわかっているからこそ、言われると余計に素直に受け入れられないんだなというのが感じられたので、影でちょっとアドバイスをしたりして。

そのうちにその人も変わってくれたので、失敗すると落ち込むこともあるけどそれが他の人のために役立つなら失敗するのも悪くないなと思いましたね。

──関口代表ご自身が素直になれたのはなにかきっかけが?

この経験を乗り越えるのには何年かかかりましたね。ある方に「誰かに認めてもらうのではなくて、自分で自分を認めたらいいんじゃない?」と言われて腑に落ちました。

その方は「たとえば、誰もみていないところで道に落ちているゴミを拾ったときに、あぁいいことをしたなと思う……みたいな感じだよ。」とおっしゃっていました。

昇進っていってみれば、誰かが勝手に決めることなんですよね。

自分の認めてほしい形では認められなかったかもしれないけど、あの時の自分は頑張ったよな、そういう経験できてよかったじゃん!と思えばいいんだと。

自分がやっていることの価値を人に委ねないで、自分で決めたらいいんだなと言うのが学びですね。

──私もそれはできてないです。周りから何言われるかとかどんな評価をもらうかは気になっちゃいますもん。ところで、社会人1年目の時はどのような感じだったんですか?

自分で仕事をしているという感覚がなくて、大きい仕事の一部をやっている感じでしたね。自分は役に立っているのかなと思っていました。一方で、自分一人で完結できる仕事はもうやり方が決まっていて、誰にでもできるじゃんと思ったりして達成感を感じてなかったですね。

──私も、自分はこれくらいはできるだろうと思っていたのに、いざやってみたら全然できなくて落ち込むことはよくあります。

そういうことはよくありましたね。100人くらいいる部署でイントラネットを作ることになった時に、構成案を部長に持って行ったりしたけど、だめって言われたりして。

これくらいはできると思ったのに全然だめだなと思ったりとか……

──そういう落ち込んだ時の回復法はなにかありますか?

たとえば誰かに何か言われて感情的になっているとか悲しい場合に、自分をちょっと客観視して「今イライラしていることに気が付いている」と考えると、その感情から少し距離が取れるからだんだんそういう感情が消えていきます。

失敗には「自己肯定感」が共通している

──今までの失敗から得られたことなどありますか?

そうですね。失敗に共通しているのは「自己肯定感」だということに気づきました。

経営者向けのオーダーメイドの英語学習サービスで起業したんですけど、サービスの値段設定を決めるのは結局は自分じゃないですか。

人によっては高いと言われることもあるけど、人の評価で決まると思っていたら「高いんだ!安くしなきゃ」と思っちゃう。

でも、自分で価値を決めると思っていたら、高いと言われても「この方には他にもっと合ったサービスがあるんだな」と思えることに気づきました。

──私は色んな人の意見に振り回されてしまうことが結構あります。

でも、自分で何か新しいことを始めるときって最後は自分なんですよね。

今は英語学習のサービスを提供しているんですけど、英語が話せずに海外に行ったりすると自分に価値がないように思えるときがあるんですよね、赤ちゃんになったみたいな。何か言われても英語が分からないと自分の意見も言えないから、自分がここにいる価値はあるのかなと。

でも実際そんなことはなくて、仕事の専門性に価値を見出してくれる人はいるし、旅行だったら来てくれただけで現地の人はうれしいから。

なのに、みんな英語できないとダメとか間違ったらダメって思っちゃう。間違えてもなんでもいいからまず話そうよ!という風に思えるのも自己肯定感が関係しているように思います。

──たしかに、失敗から立ち直るときも自己肯定感が高い方が早く立ち直れるような気がします。

インタビューありがとうございました!

 

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