起業失敗談
【独立失敗談】1社目の起業で借金した経験が2社目の成功につながった
2022/02/14 起業失敗談
なでしこTOKYO株式会社 宮内由紀子 社長
【事業内容】
・配送サービス
(企業専属便・宅配便・館内物流・スポット便・緊急便・倉庫保管作業)
・配送にともなう営業代行サービス
起業した1社目の会社が全然うまくいかなかったんですよね。
──宮内社長の失敗談を教えてください!
傍から見たら良い事業。でも実際はお金が回っていなかった。
私の今の会社は2014年にスタートしてるんですけど、その前の2012年に事務代行の会社を作りました。
──なぜ事務代行の会社を?
私は40歳を過ぎてこれからの人生をどのように生きていこうかと考えたときに、ずっと仕事をしていきたかったので、起業という選択をしたんですね。
私はもともとIT業界にいたので……
──そうなんですか!?
そうなんです。IT業界で病院の電子カルテとかの難しい堅めの仕事をしていたんです。だから、もともと運送とは全く関係ない業界だったんですよね。
最初は40過ぎて起業しようと思った時は起業したいなというのが先で、何をやりたいかということは特に無かったんです。
まずは東京商工会議所の創業塾に行ったんですね。起業した経営者の講演会で40代の女性の経営者の方が「自分は社会のことを全然知らないから、1000人の経営者と名刺交換をした。」という話をしていたんです。
「そうか、1000人と出会っていけば、どんな仕事があるとか何か自分のヒントになることがあるんじゃないかな?」と思って経営者の集まる交流会に行って色んな人と名刺交換をしていったんですよ。
そしたら、みんな人材に困っているということに気がつきました。
時々、経営者の方から「宮内さんはもともとIT業界にいたから、周りの人でウチで働いてくれる女の人いないかな?」と相談されることもあって。
実際に私の周りの40代の女性の人たちは、子供が中学生くらいになって暇になると、仕事探している女性もたくさんいたんですよね。それで、ここをうまくマッチングできたら丁度良いんじゃないかな?という発想で、最初は事務代行の会社を始めたんです。
採用での苦戦
私が最初にやろうとしたのは扶養控除範囲内で働きたい人達が週2,3回、5~6時間で働けるような仕事ばかり取って、子供さんが学校に行っている間に働ければいいなと思って始めたんですね。
そういう人を求めている会社はたくさんあったので仕事を取ることはできたんですけど、働いてくれる人の採用がすごく難しくて。
色んな求人会社が「ウチでやったら人集まりますよ」と言ってくるわけですよね。それで、色んな求人を出していって1ヶ月に約30万円の求人費をかけました。
──そんなにかかるんですね、求人って!
「やっぱりこれくらいかかりますよ」とか言われても、私は知らないから。月に30万円かけている会社はたくさんあるから、「そうなんだ」くらいの感じでやっていて。
でも、うちの会社は1人を採用しても、その人が働くのは週2,3回で5時間働くだけだから、利益っは2万とか3万なんですよ。でも、毎月の求人費とかって30万円。
これって、割に合わないよねって(笑)
──本当ですね……
で、もう一つ問題点があって。
40代以上で、子育てが落ち着いてきたから働きたい人はたくさんいて、その人達は「事務やってました!」「事務できます!」と言うんだけれど、その頃はまだWindowsが無かったので、PowerPointとかWordとかExcelとかが使えないんですよね。
でも、お客さんとしてはExcelは使えて欲しいし、PowerPointも使えたら良いよねと思っているので、全然合わない。
だからお客さんが要望する人を採用できるのは、10人に1人くらいなんですよ。やっと採用できたとしてもうちの利益は2,3万円にしかならない。これってどう考えてもビジネスとして成立しないんだよね。
周りからはそういう働きたい人が働けるのはすごく良いよねと言われてたんだけど、蓋を開けてやってみたら、全然お金が回ってないと……
よく「事業計画書を作りましょう」と言うんだけど、その時点では絵に描いた餅を書いているだけで、採用費が1ヶ月30万円かかるという計画も書いてないし、10人に1人しか採用できないということは、その時点では気づいていないので。
──やってみないと分からないんですね。
うん、やってみないと分からない。
傍から見てると良いことをやっているように見えるし。
──事務代行の会社はどうなったんですか?
私は10人のうち1人しか採用できないから、残りの9人の人ができる仕事は無いかな?と思って、今の運送の会社だったらパソコン使えなくてもできるから面白いんじゃないかな?という風に繋がっていったんだけども、結局その会社自体は2年くらいで、ほぼ業務をしていない状態で借金だけが残って、借金を全部、今度は自分の軽貨物で仕事をやって、少し結果が出始めたときに借金を返して、その会社を閉じたという経緯があるんですよね。
──前の事務代行の会社をやったから、今の会社に繋がったんですね。
そうそう。結果的には繋がったから、今思えば良かったなって思うんだけど。当時は『450万円くらい借金あるし、どうしよう。』みたいな感じでしたね。40代の女性が普通に働いてもそんな簡単に返せないよね。ヤバいって(笑)。
今は450万円借金あっても、多分全然何も思わない感覚になってるから大丈夫だけど、その時ってやっぱりすごい大きかったよね。
──450万円ってすごく大きい金額ですよね。
うん、あっという間に1年半くらいで、その借金が出てきてしまったので。
──その時に、どうやって次のことを考えていったんですか?
自己破産するわけにはいかないし、やっぱりこれ返さないといけないよね。っていう思いはあったので、何かやるしかないなっていう。でも本音の所は、あまり周りの人には見せなかったけど、すごく焦っていました。
それこそ、若ければ力仕事なり、水商売なりという選択肢があったのかもしれないけど、そういう選択肢も無いし。何かで結果を出して返すしかないという感じでした。
──会社員に戻るっていう選択肢は無かったんですね。
会社員に戻っても450万円って返せなくない?なかなか(笑)
月5とか10万ずつ返しても何年かかるのかという話なので。
でも、『そういう失敗しない方が良いよ』と言いたい半面、その経験が今の会社がここまでこれたのは、そこでも経験があったからなんだよね。
──どんなところで活きてますか?その失敗は。
色んな人が色んなことを言っているのを、知識がないと何でも『そうなんだ』と思ってしまうんですよね。そうすると湯水のようにお金が出ていくということが分かりました。
だから、色んな人に相談することですね。
例えば、「これは適正価格なのか?」とか「ここにお金を使うことは、将来的に本当に会社にとってプラスになるのか?」とか「このお金を使わずにやる方法は無いのか?」とか、そういうことを考える癖がついたかなと思います。あと、財務にすごく強くなれましたね。
──やっぱり経営者になると、色んな人から声をかけられる、ということですか?
そう。何が本当に良いかって分からないよね。だから、色んなことを聞ける人を作ることはすごく大事なことだなと思いました。
──当時は、そういう人が周りにいなかったんですか?
そう。経営者の知り合いはいたけれども……
例えば求人で、どういうやり方をしているのか?とか、広告打つとしたら如何にお金をかけないでどうやってお客さんを集めるのか?とか。そういう話は業種関係なく、色んな人の色んな話を聞いといた方が、知っといた方が良いんだよね。だから、そこが自分の中では失敗から学んだことかな。
でも、どれが正解とかって実際は無いんだよね。
──自己責任ということですか?
そうだね。
パソコンを使わなくてもいい仕事を!現在の貨物配送の会社につながる
──現在、経営されている「なでしこTOKYO株式会社」は何期目ですか?
8期目がもうすぐ終わるところかな。
──じゃあ、1社目の失敗を活かして、特に大きな失敗もなく?
いえいえ、最初の3年は本当に上手くいかなかったんですよ。
最初の3年が一番大変だったと思う。しかも私運転できないからさ。
──え、そうなんですか?
そうそう。今は車を運転できる女性社員がいるから良いけど、いきなり人も雇えないしね。
やっぱり最初の3年は大変でした。
──最初の3年間で一番大変だったことはなんですか?
最初の3年で一番大変だったことは、車を持ち逃げされたことかな(笑)。
──働いてた人にですか?
働いていた20代の男性だったんだけど、多分、借金があったんだよね。
普通に前の日まで働いていたのに、ある日突然来なくなって、いつ家に行っても車も無いし、もちろん電話も出ない。結果的には長野県で車が見つかって、うちで貸してる車に家財とかテレビとか積んでありました。あれは割とビックリしたよね。
──結局、車はどうなったんですか?
車はレッカーで移動させて持って帰ってきて、中の荷物はお母さんに電話して取りに来てもらった(笑)
その時に同業者の経営者に相談したら、何人かはそういう経験をしてる人がいるんだよね。
周りでそういう経験してる人はいたので、「なんとかなるや」って。「ああ、あることなんだ」みたいな。
──今も周りの方によく相談はするんですか?
ちょっと気になることがあったら、同業だけでなくて割と色んな人に聞きます。例えば経営者は社員のことで悩むことがすごく多いから、そういうことを相談できる人はいつもいますね。
──じゃあそういう色んな経験された中で同じような経験してる方に言えるようなことは何ですか?
いくつになっても、人に相談することはすごく大切なことで、相手が年上であろうと年下であろうと全然関係ないんだよね。私より色んなことを知ってそうだなと思う人には色んなこと相談したり、聞いてみたりということをしていくことが、あとで自分の助けになると思います。
──年齢が上がっていくとプライドもあってだんだん相談するのが嫌になってしまいそうですけど、大事なんですね。インタビューありがとうございました!